奥三河花祭り見聞録(2002.10/14〜)




    奥三河に、「花祭り」という民俗的神事がある。
    11月から新年にかけて17の地区ごと順番に、二日がかりで行なわれる祭りだ。
    朝九時ごろから 神迎えの神事。神の降臨を喜び悪霊を踏み固める地固めの舞、鬼の舞、湯たて神事などが
    夜から明け方にかけて延々と続き、最後に神を送り出す神事などがあり、終わるのが翌日の夕方という、
    ものすごーく長くて古式床しき祭りなのだが、 なにせ山間の小さな地区、知人でもいない限りなかなか見に行けない。
    昨年、たまたまNHK文化センターの折り込みチラシで花祭りツアー(写真家であり伝統文化研究家の講師つき)というのを発見。
    即、プレアデス仲間で鬼に詳しいピッポさんを誘って参加した。これがまあ、面白かった!
    で、今年も地元の友人を誘って申し込んだ。
    11月22日、午後2時、文化センター前集合。 マイクロバスに乗り込む。


    途中、飯田線東栄町の無人駅に立ち寄る。
    このあたりは看板も街路灯の飾りも駅舎まで花祭り一色。




    ←鬼の顔にみえますか?




         花祭り会館で祭りの概要や地区毎の衣装や飾りの違いについて、展示を見ながらレクチャーを受ける。
    祭りを司るのは[宮人 みょうど]。 今は公民館で行なわれるが本来、[舞庭 まいど]という神聖な場をしつらえる。


    舞庭の中央に竈をつくり、その上には神が宿る[湯蓋 ゆぶた]または、
    [びゃっけ]という紙の飾りや、[ざぜち]という切り紙を吊り下げる。
    湯蓋は神仏混交系の地区では、四方をあらわす、赤・緑・白・黒に、
    神の道、黄色をあわせた五色の紙を切ったもの。
    神道系の地区は白一色。その切り方も地区ごとにちがう。
    鬼の面やまさかり、衣装などなど、全部が地区ごとに違うのだ。


    今回行くのは月地区。風情ある地名。神社は槻神社、と字がちがうそうだ。
    ようやく宿につく。同年輩のご婦人二人連れと同室に割り当てられる。


    夕食の途中、宿に榊鬼が来たというので見学に。祭りには[榊鬼]・[山割鬼]・[茂吉鬼](呼称も地区によって違う)
    そのお供の鬼などが出るがメインは榊鬼。で、本番の前に、地区の中を巡回して地固めをしていく。




    顔の周りに綿入りの防護マスクのようなものを巻いてから、お面をかぶる。
    このお面は高さ50センチ。重さ5キロ。
    体の悪いところを踏んで、悪を払ってくれる。
    けっこう、しっかり踏んでくれたらしい。
    この榊鬼を演じるのは若衆の誉れ。
    その代わり、下手だとあとあとまでくさされるらしい。







    見学のあと、また食事の続き、その後仮眠。
    10時にバスで宿を出発。車で5分ほどの公民館で祭りは行なわれている。


    公民館の土間の真ん中に竈がしつらえてあり、そのぐるりに見物人。
    竈の上にはいろとりどりの湯蓋がいっぱいぶらさがっている。
    家内安全などを祈願して寄進した人の名札が見える。
    わたしたちはさっさと板の間にあがる。見物人の半分は地元の人、または出身者。
    残り半分はカメラマンと大学生らしきグループ。
    多分民俗学かなにかを専攻しているのだろう。先生らしき人も見える。
    行ったときは、ちょうど[地固めの舞]の最中だった。
    これは高校生くらいの男子が、竈のまわりを周りながら、
    扇・やち・つるぎをそれぞれもちかえ、交代して、

    ♪てーほへてほへ ててとへてほへ
    と、各50分くらい舞う。つまりこれだけで合計2時間くらい。
    おはやしの笛や太鼓も、適当に休みながら、酒を飲んだり弁当を食べたりしながら交代で囃している。まことにノンビリ。


    そのあと、深夜12時ごろから小学中学年、子ども三人が[花の舞]。
    これも、地固めと同じ長さで延々50分ずつ。
    笠をかぶった姿がかわいい。しかし、深夜の12時! 
    児童労働なんとか法などのない時代だし、神が降りるのは深夜だし、
    神に一番近いのは子どもだし・・・古代そのものが息づいているのだ。
    花の舞がおわるころ、わたしが立っている位置から、むかいの家に榊鬼の姿がみえた。
    来るぞ来るぞ、と気持ちが高まる。





    花舞がおわって小休止のあと、青年団にまわりを固めれられて榊鬼の[庭入り]。
    公民館中の見物人がなだれをうって鬼の周りに殺到! 
    榊鬼は大きなまさかりを振り回して踊る。
    鬼の動きにあわせて、ヘルメットをかぶった青年団が、客をおしのける。
    見物人はどどどっと揺れながら

    ♪とーほへてほへ とーほへてほへ
    ♪てほとへてほへ てほとへてほへ


    と会場中、トランス状態。
    わたしはとてもカメラじいさんをおしのける勇気はなく、遠くから写す。真ん中あたりの赤いのが鬼です(苦笑)

    庭入りは、地区をまわってきた榊鬼がとりあえず「帰ってきました」と挨拶をするということらしく、
    鬼はささっと竈の周りを何周かしただけで撤収するが、そのあとも茶髪のお兄ちゃんやら
    中高生らしい少年少女、70近いおじいが一緒になって、
    ♪とーほへてほへ とーほへてほへ
    ♪てほとへてほへ てほとへてほへ
    と、踊りまくる。じいさんだいじょうぶかい、と思わず心配になるが。。。
    ここらあたりが、祭りのクライマックス。ところが、昨年見た地区に比べると、やや盛り上がりに欠ける。
    昨年はもっとすごかったのだ。もみくちゃになりながら、わたしたち余所者も
    ♪とーほへてほへ とーほへてほへ
    と歌いながら体をゆすったものだが・・・とちょっと淋しい。
    トランスのさめやらぬ中、[三つ舞]。なんとこれは、低学年か幼稚園。まことにかわいくあどけない。
    しかし、深夜の1時半! これはさすがにちょっと舞いの時間が短い。

    バスの出発予定は2時だったが、まもなく[山割鬼]が来るというので、延長の連絡が入る。
    同行のご老体はそろそろ限界のようす。実はわたしも花の舞のあたりでうつらうつらしていた。
    2時、供の鬼2匹が踊る。が、なんとこれは若い女の子。しかもほとんどぶっつけ本番らしく、
    お祭りじじいがみかねて手取り足取り教えながらいっしょに踊っている始末。


    本来、神事や踊りは男子に限られていたのだが、そして男子は三つ舞・花の舞・・とステップを踏んで
    いつかは榊鬼、というのが伝承されていたはずだが、過疎化で子どもの数が減少し、
    女子も踊る。他地区から借りる。外孫を呼び寄せて参加させる。というのが現実らしい。


    2時15分ごろ山割鬼が入ってきたのを見届けて、迎えのバスに乗る。

    そのあと、いよいよ竈に火がたかれ[おつるひやる おかめひょっとこ]や
    [おきな]などの舞いがあり、
    それから煮立った湯を笹につけてあたりにふりまく[湯ばやし]などが
    あるらしいが、とうてい見届けることはできない。





    宿に帰って大急ぎで風呂を浴び、就寝したのは深夜の3時。 さすがに曝睡!
    それでも不思議なことに目覚ましもかけないのにちゃんと7時前には目が覚め、朝食をとって8時半に宿を出発。
    10時半には文化センター前に帰着した。 やれやれ、お疲れ様。
    面白かった。たしかに地区ごとに微妙にちがうのがわかって、興味深い。
    さて、来年はどうしよう。鬼が笑うか・・・






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