『百物語 − 第二十一夜』

『百物語 − 第二十夜』



『百物語 − 第二十一夜』(2004・9/30 豊橋文化会館)

構成・演出  鴨下信一
キャスト   白石加代子

地元の文化会館に初来演。
発売初日で完売し、全席自由席だのため6時会場のところ3時頃にはもう列ができていたという人気。
わたしも友人と交代で並ぶ。

今回は「おとぎ話」シリーズ。
最初のご挨拶で、前回わたしが感じた
>ところで、手にしている台本。縦書きで、右から左に目を追っているのに、 ページをめくるとき、
>右ページを左にくっていたけど、あれはなぜ? (普通は左ページを右にくるでしょう)
に答えてくれた。逆綴じは、見ている人に不思議な印象を与えるための演出だそうだ。
今回は席が近かったからページも見えた。2段組だった。

さて。
オードブルは内田百閧フ「桃太郎」
桃から桃太郎が生まれたのはわかっているが、それでは、パカッと割れた桃本体はその後どうなったのか?
というところに着目したところが、なんとも百閧轤オいし、 とぼけた味の、へ?というような話なのがまた、百閧轤オい。

最初のメインディッシュは、太宰治の「カチカチ山」
16歳の無垢な残酷さを持った処女ウサギと、37歳、愚鈍な勘違い男タヌキのやりとりは
活字で読むより、ある意味、ナマナマしい。
「惚れたが悪いか」・・・読んでも聞いても、絶妙の、これ以上ない科白だ。

ここまでは、つっ丈のアンティック着物で、足をひろげ、床に転がり・・・くだけた語りで場内をわかせる。
休憩をはさんで後半は、がらっと雰囲気を変えて、上品な無地の着物ににび色の袋帯。

二つ目のメインディッシュは曽野綾子の「長い暗い夜」
父子二人暮らしのイギリス駐在商社マンが日本からの友人に語る、この国の長い暗い夜。
次第に、彼が抱える問題が見えてくる。ホテルに泊まる予定の友人を自分の家に誘う。
「今、火を入れるからね」ひさしぶりの来客に、はしゃぎながら部屋を片付け暖房を入れてまわる男。
しかし、友人は指摘する。暖炉の前で子どもが読んでいる本は・・・きゃーっ!!
ああ、こわかったぁ。場内はしーんと静まり返って、拍手もわすれるほど。

お口直しのデザートは、宮沢賢治「月夜の電信柱」
これも絵本で読んだことがある。ドッテケ、ドッテケ、ドッテケテー。
宮澤賢治特有の不思議な世界、繰り返されるオノマトペ―を、なんと!軽やかに(?)
両足跳びで跳ねながら語り、演じる。
それでも息も切らさないし、どんな体勢でも、声色でも科白がはっきり通るのはさすが!

満員の観客、大満足であった。
終って外に出ると、十六夜の月が煌煌と照っていた。



『百物語 − 第二十夜』(2003・10/1 名古屋アートピアホール 1階11列22番)

構成・演出  鴨下信一
キャスト   白石加代子

前々から観たいと思っていたが、ようやく念願がかなった。
今回は初の翻訳物。といってもこれまでのを知らないから比較はできないが、パンフのリストを見ると、
読んだことのある本がいくつか。 ああ、これも観たかった。これも・・・

正面に、出入り口にも窓にも使える両開きのドア。右手に黒いシンプルなソファとクッション。
白石加代子は喪服のようにも見える黒いドレス。黒い靴。髪は束髪にまとめている。
1話目。オードブルだそうだ。サキの「開いた窓」
サキの作品で一番の傑作だろう。 少女の可愛い嘘を可愛く演じていた。

2話。メインディッシュ。ヒュー・ウォルポール「銀の仮面」
これは、未読。
辛辣なことを言ってる割りに(だから?)愛情あふれる独身の老嬢(って、50歳で!)が、 ある夜、貧しい青年
(この世のものとはおもわれないほど美しい!)に声をかけられ、つい、 親切を施す。
半分疑い、半分また来るかもと期待し、そんな自分をわらう余裕もある。
そんな心をみすかすように、青年は、またやってくる。
心を奪われているのを、誤魔化し誤魔化し 、女性は、また親切に・・・
ある時は言葉巧みに、また威圧的に、あるいは馴れ馴れしくふるまう青年に、 次第次第に取り込まれていく女性。
そして、ついには・・・
正面の壁にかかった銀の仮面。ドアの開閉と照明、ソファに座ったり、もたれこんだり、ついには寝たり。
それだけの演出で、次第次第に破滅していく恐ろしさを表現。
わー、こわかった!

休憩をはさんで3話。
コナンドイルの「踊るお人形」を夢枕獏が翻案、書き下ろししたもの。
白石加代子は、レトロな着物に赤い足袋、草履。束髪に髪飾り。 ドアをひらくとホームズの等身大?人形。
怖い、怖い、ではお客様の興味が続かないから、怖いと面白いを組み合わせた。
とパンフにあった、その笑いの方。

しかし・・・夢枕獏が「坊ちゃん」の清(115歳)にインタビューし、夏目漱石の友人宅に起きた事件を
ロンドン留学中に親しくなったシャーロック・ホームズを日本に招いて解決した顛末を聞きだす。
(ああ、ややこし!)という構成になっている。
つまり、冒頭から清・夢枕獏・夏目漱石・シャーロックホームズ・友人、さらにその家族や関係者が
ぞろぞろ出てくる。
白石は、車椅子を乗り回し 声色を変え、ホームズ人形に語りかけ・・・
それはそれは達者に演じわけているが、5人以上の人物がからむ事件の顛末を、伝え聞いた清が一人で語る、
という科白劇だから、聞いている方は混乱する。
笑いはとってるし、ラスト、犯人の独白はさすがにシーンと水をうったような緊迫感があったが、
こなれてないという印象は否めない。
これは、サービス精神旺盛な夢枕獏の、サービス過剰の罪だろう。おかげで、2話の怖さがかき消されてしまった。
もっと、すっきりした台本で、洒落た笑いを取って欲しかった。

舞台中心に活躍している役者さんは、テレビに出ないと、写真でしか知らない。
白石加代子は、もっと、恐い、ギラギラした人という印象を持っていた。
「身毒丸」のビデオを見て、恐さと可愛らしさの両方持っている人だということを発見した。
たしかに恐い話だし、特に第2話の、じわじわと迫ってくる底知れぬ恐さを伝える演技力はさすが。
一方で、可愛い人、だとあらためて再認識した。
うん、やっぱりすごい役者だ。

ところで、手にしている台本。縦書きで、右から左に目を追っているのに、 ページをめくるとき、
右ページを左にくっていたけど、あれはなぜ? (普通は左ページを右にくるでしょう)



   *これまでの演目リスト*  (順不同)

夢枕獏    『ちょうちんが割れた夜』  『二ねん三くみの夜のブランコの話』
筒井康隆  『如菩薩団』  『五郎八航空』  『関節話法』  『池猫』
田中貢太郎 『猫の踊』  『室の中を歩く石』  『平山婆』  『赤い牛』  『瘤の運動』  『天井からぶら下がる足』
村上春樹  『フリオ・イグレシアス』  『トランプ』  『もしょもしょ』
岡本綺堂  『父の怪談』  『影を踏まれた女』  『蛇精』
三遊亭円朝 『江島屋騒動』  『真景累ヶ淵』
江戸川乱歩 『人間椅子』  『押絵を旅する男』
山川方夫  『夏の葬列』  『十三年』
内田百間  『件』  『花火』
浅田次郎  『うらぼんえ』  『鉄道員』
半村良   『箪笥』              夏目漱石  『夢十夜/第一夜』
南條範夫  『燈台鬼』            城昌幸   『ママゴト』
永井龍男  『青梅雨』            小松左京  『くだんのはは』
星新一    『おーいでてこーい』      小川未明  『赤い蝋燭と人魚』
泉鏡花    『高野聖』            夢野久作  『瓶詰地獄』
渡辺温    『兵隊の死』          坂口安吾  『桜の森の満開の下』
川端康成  『片腕』             橘外男   『蒲団』
山田風太郎 『首』              向田邦子  『かわうそ』
白井喬二  『忍術己来也』         高橋克彦  『遠い記憶』
志賀直哉  『剃刀』             阿刀田高  『干魚と漏電』
松本清張  『二階』             山本周五郎 『その木戸を通って』
小泉八雲  『破約』             西丸震哉  『釜石の幽霊』
和田誠    『おさる日記』         吉行淳之介 『追跡者』
宮部みゆき 『小袖の手』          吉屋信子  『鬼火』
小池真理子 『ミミ』              藤沢周平  『夜が軋む』
久生十蘭  『昆虫記』            柴田錬三郎 『赤い鼻緒の下駄』
遠藤周作  『蜘蛛』             江国香織  『夏のすこし前』
大坪砂男  『天狗』
その他  『悋気の火の玉』  『首提灯』  『死神』  『阿部定事件予審調書』






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