2004年6月25日 夜の部。三階ち列36番
傾城反魂香
吃音の絵描き又平は、いろいろな事が悪い方へ転がって、師に疎まれてしまう。
もはやこれまで、と、自害を思い定める又平に、
「死ぬなら一緒に。でもその前にあそこの手水鉢を墓石とみたてて絵姿を」と女房が筆を勧める。
覚悟をこめ一心に筆を動かす又平。と、なんと!石を抜けて反対側に絵姿(それもちゃんと後ろ向き)が
浮き出てきたではないか。
「か・かか、抜けた!」
これぞ名人の証。師に苗字の名乗りをゆるされ、お家の大事の交渉役まで任されハッピーエンド。
話としてはとってもわかりやすい内容。
吃音の科白まわしやパントマイムに近い所作は、それこそ魂を込めて演じなければ、
薄っぺらに、差別的になりかねないところだが、
けっして器用とはいえない、 愚直なほど真っ正直な芸風の吉右衛門に、不遇な絵描きはまさにぴったりのはまり役。
抑えに抑えたあとで、師に譲られた紋服の袖に手を通しながらはしゃぐ姿は、まさに喜びにはじけていた。
吉右衛門と息のあった世話女房おとくの雀右衛門も見事。
名優二人の芝居に引き込まれた。
義経千本桜 吉野山
静御前を菊之介。忠信を菊五郎。
今回、忠信はキツネにはならず、それらしい所作をするだけ。
以前菊五郎を舞台に近い席で見たとき、町人役だったせいもあり、肌の衰えが目についたが、
今回は白塗りだし遠い席だったので、美しさにただうっとり。
逸見藤太に権十郎。 もったいないほどの役だが、踊りの名手のひょうきんな所作が二人を引き立てる。
満開の桜の書割も華やか。二人の舞姿も絵のように美しく、お目出度い雰囲気を盛り上げる。
助六由縁江戸桜
歌舞伎十八番。当然、舞台には助六幕がかかっている。
花魁が続々と舞台に並んだところへ、玉三郎の揚巻と左団次の髭の意休が登場。
花魁たちも、揚巻も、意休も、豪華絢爛な衣装。まずはコスチュームプレイで圧倒される。
重さ20キロくらいあるだろうが、玉三郎は、後ろ向きにのけぞって背中の柄をみせてくれる。すごい筋力!
客の意休に対して揚巻は「間夫(助六)がなくて、なんの勤め」と、意地を通す。
この科白の迫力! 妹分の花魁白玉、女形の花形・福助、がかすんでしまうくらい凄味オーラの玉三郎・・・
そこへ、揚幕の音がして、いよいよ海老蔵扮する助六登場。館内がいっせいにどよめく。
舞台下手側、2階席3階席の客のほとんどが身を乗り出して覗き込んでいる。
わたしたちの席からは、花道の1/3くらいしか見えない。下駄の音を追うように覗き込む。 ようやく見えた! 錦絵のように、さまになっている。
河東節にのって、科白なしで約5分。花道で、傘をひろげ、つぼめ、みえをきり、くるりと回る。
モデルウォークと思えばいいが、動くたび振り返るたびに館内がどよめき、ため息がもれる。
5分ものあいだ客の視線を釘付けにしてしまうほどの磁力! ・・・花道そでの桟敷席で見たかった〜
台詞回しはやっぱり硬い。まだ、若いもんネ。
助六は、目指す敵の証拠となる刀をあらためるため、出会う人出会う人にケンカを売る。
一番あやしいのは意休。なんとか怒らせて刀を抜かせようと、いろいろ仕掛ける。
もう、ヤンチャ坊主のよう。それがまた、海老蔵にはまっているのが可笑しい。
玉三郎・左団次・海老蔵だけでも充分豪華キャストなのに、白酒売り・じつは助六の兄に勘九郎、
さらにちょい役に、松緑、吉右衛門・・・と、もうもう、これだけの役者がそろうなんて 襲名公演でなければ見られない顔ぶれだろう。
通人(松介)が、海老蔵と勘九郎の股くぐりに、写メールやらヨンさまやらで客を笑わせてくれる。
助六は2時間と、歌舞伎としてはけっこう長い演目だが、いかにも江戸歌舞伎らしい威勢のよさ、
勢いのよさに加えて、脇に回った名優たちが海老蔵を盛りたてるおめでたい気分が満ち満ちて、
時のたつのを忘れて楽しんだ。
ロビーの写真や販売グッズも海老さま一色に染められ、単衣の季節なのに着物姿も大勢いたし、
入り口ロビーには贔屓客に挨拶をする海老蔵母の姿
(シックな銀ねずの着物)も。 ・・・・やっぱり、襲名披露って特別なのね。
4時半開演9時半終演。5時間たっぷり楽しめて6300円なら、安いものだ。
今回、いわゆる大向こうの掛け声が3、4人。
その一人が、タイミングは外してないからまだしも、やたら大きな声をはりあげるのが気になった。
本人は得意なのだろうが。。。
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