海外の児童文学 ーた・な行




[た行]
●『ぼくのつくった魔法のくすり』  ロアルド・ダール作 宮下峯夫訳 クェンティン・ブレイク絵  評論社  2005
ジョージは農家の一人息子。
両親がでかけたあとは、いじわるで気難しい婆さんの世話をしなくちゃいけない。
まったく、いやな婆さんだ。 そうだ、いつものクスリのかわりにちがうものを飲ませてやろう。
ジョージがでたらめに調合したクスリは、とんでもない効果をうみ・・・
そこから、どんどんブラックユーモアの世界へ。 そして、ついには・・・
いやあ、可笑しい。痛快でシュールでぶっとんでいる。
でも、あとからジワリと毒が効いてくる。 これぞ、ダールの世界。
絵も、ピッタリ。
●『アリーテ姫の冒険』 ゴールス・D作 グループウイメンズ・グレイブズ訳 学陽書房 1989
可愛くてイノセンスで王子さまが結婚してくれるのを待っている姫ではなく、賢くて元気で自分で自分の運命を切り開いていくお姫様の冒険。


[な行]
●『逃れの森の魔女』  ドナ・ジョー・ナポリ  金原瑞人・久慈美貴共訳  青山出版社  2000
ヘンデルとグレーテルを魔女の側から描いたパロディ。といっていいのか・・・
母である魔女が、子どもを食べる(グレートマザーとなる)自身のサガをいかに抑えるか、という、ちょっと、いや、かなり哀しい物語。
原題は「Magic Circle」


●『野に出た小人たち』  メアリー・ノートン  岩波少年文庫
背丈20センチくらいの小人族は、背丈以外はまったく人間と異なるところはない。
ただ、自ら生産ということをしないで、人間の家の床下に住み、借り暮らしをしている。
ビンのふた、ハンカチや毛糸の切れ端、ピン・・・あれ?どこにおいたっけ? 
人間が気づかないうちに「借りて」きた小人たちは、思いもかけない使い方をして暮らしている。
ところが、とうとう人間に見つかり・・・というところまでが一巻。

二巻では、アリエッティと両親は住みなれた大きな家を出て、野原をつっきり、川ぞいの靴の中で暮らし
やがて、その靴の持ち主、馬車でくらすジプシーに見つかり・・・と、小さな世界での大冒険。
たとえば虫や草や木の実のサイズ。人間のしぐさ、ネコや蛾などの恐怖。
など、20センチから見える世界が、まるでドールハウスをのぞいているように楽しく、しかもリアリティがある。
そして、一家の主らしくふるまう父親、心配性で口やかましく、いかにもオバタリアンな母親、
好奇心いっぱいで外の世界にあこがれ、でも両親のやり取りに気配りを忘れない娘。
それぞれにちゃんとキャラがある。
とくに今回は、これまで人間と同じ暮らしむきだったのが、危険がいっぱいの野に出たため、さらにサバイバル度が高まった。
野宿をしたり、食べ物を探したりの苦労や、出来事への反応など、とっても人間くさくて面白い。

本書が書かれたのは第二次世界大戦直後。
イギリスは戦勝国とはいえ、本土は空襲にあい、経済は破綻し、人々の暮らしは困窮していたころ。
人々は、乏しい物資をなんとかやりくりし、それこそ「もったいない精神」で日々をしのいでいたころだろう。
これを読んだ子どもたちは、そうか、ぼくたちは小人たちといっしょ。
仮の、借り暮らしだ。と思ったことだろう。
苦しい生活をそのまま描くのではなく、楽しいファンタジーにして、気持ちを明るくもとうとする。文学の力。









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