海外の児童文学 ーま・ら行








[ま行]
●『シルバー・チャイルドT  ミロと六人の守り手』  クリフ・マクニッシュ・作  金原瑞人・訳 理論社  2006
ふつうの少年ミロは突然、異常な食欲とともに、体に異常があらわれ、吸い寄せられるようにコールドハーバーにむかう。
コールドハーバーはゴミの埋立地、悪がきがたむろする、おそろしい場所だ。
同時期、不思議な能力を持つ子どもたちが、コールドハーバーにつぎつぎ集まってきた。
正のエネルギー“ビューティ”を人に放射する能力を持つトマス。
まるで仔犬か昆虫のように、すばやく地面を這い回る双子の少女、エミリーとフリーダ。
どこまでも他者を気遣う“気は優しくて力持ち”の巨大児ウォルター(なんと、身長3メートル、身幅1・5メートル!)。
そして、人だけでなく生き物の心を読み取ることのできる少女、ヘレン。
かれらは、みな一様に謎のうめき声<ロア>におびえていた。 そして、同時期に、特異な能力をもち、異形に変化していた。

一人、離れたところに隠れていたミロは、何度か激しい苦痛とともに、皮膚がめくれ中から金色の光がさすなど、まるで脱皮のように変化を繰り返していた。
やがて、苦悶の声を聞きつけたトマスたちが、ミロのもとに集まってくる。
そこで彼らが目にしたものは……髪はすべて抜け落ち、目は異様に大きく、しかも、まぶたがない、とても人間とは思えない姿。
足がなくなり、手が折れ、皮膚がはがれ、その下には銀色の体が見える。
声も出せないまま、ミロはすさまじい熱に苦しんでいた。

特異な能力、さらに特異な外見になった少年少女は、なぜ出現したのか?
なかでも、大きな怪鳥のような姿になったミロは、どんな役割をになっているのか?
<ロア>とは、何者なのか? 次巻に続く
●『シルバーチャイルドU 怪物ロアの襲来』 クリフ・マクニッシュ・作  金原瑞人・訳  理論社 2006
巨大な銀色の鳥になったミロはコールドハーバー上空に羽をひろげ、やがてくるロアの襲撃に備えている。
そして、ミロに呼び寄せられるように、世界中から子供たちがコールドハーバーめざして続々と集まってくる。
集まってくる本人にも、わけがわからない。
ただ、あそこへ行かねば!という衝動につき動かされ、親や家族の制止も振り切り、警察や軍隊のバリケードも乗り越え。。。
ここらあたりは、なんだか新興宗教の教祖と信徒のようで、少々気味が悪い。
コールドハーバーには見えないバリアが張られ、大人は中に入れない。
そもそも、大人と子どもの境界線がわからない。
どうも、十代も低いあたりから下が子ども、という括りらしい。

こんなに大勢の子どもが集合すれば大混乱になるはずだが、子どもたちは、ウォルターたちの指示に従い、それぞれグループを作り自発的に暮らしはじめる。
双子の姉妹は、みなの制止もきかず海を目指す。
双子は、大昔ロアによって海底深くくくりつけられた<プロテクター>を見つけるが、どうしても開放することができない。
一方、集まってきた子どもたちの中に、なぜか憑かれるように地面を掘り始める子どもが現れた。
トマスは、最初、その<土掘り屋>集団にビューティを注ぐ。
ビューティを受け、腕がドリルのようになった子どもたちは、昼夜兼行で、まるで機械のようにどんどん穴を掘り進んでいく。
やがて、<土掘り屋>は地底にひそむ、ロアの子ども、カルナックの呼び声に操られていることがわかり、トマスはビューティの供給を止める。

ミロの妹、ジェニーは、予知能力があるらしいが、幼いため、うまく言語表現することができない。
ヘレンが、なんとか読み解こうとするが、なかなかむずかしい。

ヘレン、トマス、ウォルター、双子・・・そして、だれよりも、怪鳥となったミロは、命を賭けて恐ろしいロアから、この地球を守ろうとしている。
Tよりさらにダイナミックで、重層的になってきた。
ところで・・・ロアって、なに?!プロテクターてなに?!
ロアは、宇宙のかなたからやってきた極悪なものらしい。 子を産む、というから生物の一種らしいが、エイリアンみたいなものか?
ずっと昔はロアもも大勢いたが、どうやら、今は、最後の一匹ずつになり、互いの生存をかけた戦いが始まるらしい。
なんか、善悪の2極的で、そこんところがいまいち共感しきれない。
ただ、登場している子どもたちはみな、もともと普通の少年少女で、特殊な能力を持ったり、体が変身していくことに対する恐れ、 ためらい、迷い、とまどい・・・そういう心の動きが丁寧に描かれていて、そこには大いに共鳴できる。
あとは、地球を脅かそうとするロア、ロアによって自由を奪われ、長い間冬眠していたプロテクター、その存在が、どれだけ納得できるものであるか、どれだけリアリティを持って描かれているか、によって読後感が大きく変わると思う。
●『シルバーチャイルドV 目覚めよ! 小さき戦士たち』 クリフ・マクニッシュ作 金原瑞人・中村浩美訳  理論社  2006
いよいよ、ロアが近づいてきた。 ロアの腹の中には赤ん坊が2匹。さらに地底には、ロアの子・カルナックが地表へ出る日を狙っている。
土掘り屋たちは、少しでもロアやカルナックの妨げになるのなら、と自分たちが犠牲になることを覚悟で、地底深く、その時を待っている。
双子や、新たに力を得た子ども達が、命のぎりぎりを賭けて海底にもぐっているのに、<プロテクター>の縛めは、なかなか解けない。
ほかにも自分のビューティを必要とする子どもがいるはずだ、とトマスはコールドハーバー中をさまよっている。
ようやくプロテクターの声を聞くことができたヘレンは、励まされながら、ロアの弱点を探ろうとする。
しかし、それは、こちらの情報を探られるという危険と背中合わせ。
しかも、戦略にたけたロアは、わざと手の内を見せたり、あるいは、プロテクターこそ悪だとささやいたりして、ヘレンを撹乱する。
ウォルターも、トマスも、土掘り屋たちも、双子も、ジェニーも、それぞれ、迫り来る危険におののきながら、なんとか勇気を奮い立たせてている。

そして、いよいよ、ロアの襲撃がはじまった。
ミロ、プロテクター、そして、子どもたちとの戦いは、波状的に繰り返されながら、ちがう局面を見せながらの死闘が続く。
ヘレンの思考にそって、ジェニーは、見たこともない異様な変化をはじめる。
なんと、5歳のジェニーが武器になっていくのだった。

いやあ、参った。
プロテクターの、ロアの、赤ん坊の、そして、ますます特化していくシルバーチャイルドたちの造形が、予想というか常識を超えている。
そもそも、この作品世界そのものが現実にはない作り物なのだから、どう作ろうと作者の自由なのだが、 それにしても、想像力、創造力のスケールのでかさといったら!
しかも、ありえない造形、見たこともない形状なのに、絵が浮かぶ。想像力をかきたてられる。
そして、なにより、ヒーロー・ヒロインたちが、最後まで恐怖に震え、自分がなにをするべきか迷い・・・ とっても人間的で、しかも、最後まで勇気を持って、自分のなすべきことを選択していることに、感動と共感を覚える。
ロアも、いわゆるスペースオペラ的悪の怪物ではあるが、シルバーチャイルドたちとの戦いの最中、 ふと見せる気の迷い、赤ん坊に対する怒りなど、とても、人間的(というのかな?)キャラクターを持っているのだ。
だからこそ、ラストでは当然、怪物は退治され、地球に平和がもどるのだが、薄っぺらなめでたしめでたし以上のものが味わえる。
うーん。恐れ入りました。
●『のっぽのサラ』  パトリシア・マクラクラン  金原瑞人訳  徳間書店  2003
見渡す限り大草原の農家。 弟のケイレブを産んですぐ、ママは死んだ。
だから、ケイレブにはママの記憶がない。
ママの歌、覚えてる? おねえちゃんがママの歌を覚えていたら、ぼくもママのこと、思い出せたかもしれないのにな。
パパは歌わなくなったんだね。
パパが新聞に出した花嫁募集広告に返事が来た。
手紙のやりとりの末、遠い海辺の地から、黄色い帽子をかぶったのっぽのサラが、一ヶ月のお試しでやってきた。
おずおずと近寄る子ども達。
少しずつ会話をし、共同作業をし、食事をし・・・時間を積み重ねていく、一家とサラ。
わたしもケイレブも、サラになじめばなじむほど、サラのひとこと、ひとことが気になってしかたがない。
サラは海が恋しいんじゃないかなあ。
馬車の乗り方を覚えたいって・・・駅に行って、そのまま帰ってしまうんじゃないかなあ。

大草原の小さな家を連想するような風景のなかで、この一家はこれから家族になっていく。
互いの心にあいた穴を一つずつ埋めながら。

新聞広告で花嫁募集。
一度も会ったことのない人のところへ嫁に行くなんて、ずいぶん勇気があっんだね、なんて、気楽な話ではない。
女性が一人で生きていくのが困難な時代、そのかわり、人々がおおらかで、互いに助け合い、信頼しあえた時代のお話。
でも、サラが大工仕事が得意だったり、ちゃんと自分の意思を持っていて、パパもそれを受け止めている。
従属とか上下ではなく、個として対等の立場であるのが心地よい。
[ら行]
●『ミオよ わたしのミオ』 リンドグレーン作 大塚勇三訳  岩波少年文庫
みなしごのボッセは「はるかな国」の王子ミオだった。そこにはやさしいお父さんの王様がいて「ミオよわたしのミオ」と・・・。
児童虐待をする親に読ませてやりたい。
子どもはこんなにも愛情と優しさを求めているのだと、心の中におとぎの国を持っているのだと。
●『ちいさなひつじ フリスカ』  ロブ・ロイス作  かねはらみずひと訳  ほるぷ出版  1991
おちびちゃんの奮闘記。
ものがたりとしてとくに新し味はないが、木版刷りのような穏やかで素朴な絵がいい。






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