『黒蜥蜴』(2003・4/11  愛知厚生年金会館 一階Nー12)

演出・美術・衣装・音楽   美輪明宏
キャスト  黒蜥蜴:美輪明宏
       明智小五郎:高嶋政宏
       雨宮潤一:木村章吾
       岩瀬早苗:須藤温子
       岩瀬庄兵衛:田口計

妖しい美学をもった闇の女王黒蜥蜴と、犯罪の美学を愛する天才的探偵明智小五郎は、ネガとポジ。
お互い相容れない、危険に満ちた、だからこそ惹きつけあう、禁断の愛の物語。
闇・妖し・幻想の天才江戸川乱歩の原作を、独特の美意識をもった天才三島由紀夫が脚色し
生きた虚構美美輪明宏が演じているのだから、 そりゃあもう、古典的・非日常的・退廃的で豪華絢爛な美の世界。
エロティシズムとナルシズム溢れるイメージ世界。

衣装を中心に紹介しよう。

第一幕/中ノ島のホテル
娘を誘拐すると脅迫をうけた宝石商は、探偵明智小五郎に警護を依頼。
緑川夫人に扮して令嬢に接近を図る黒蜥蜴は、黒いスパンコールのドレスに オストリッチの羽根らしき黒いコートと、
全身キラキラ光る黒づくめ。初々しいピンクの振袖の令嬢と対照的。
まんまと令嬢を誘拐した黒蜥蜴は、シルバーグレイの和服に着替え、なにくわぬ顔で部屋へもどる。
タキシードで身を固めた明智とトランプをしながら心理戦。 ここが最初の山場。

第二幕/第二場。
互いに相手を好敵手として意識し、恋いの相手として惹かれあう二人。
黒蜥蜴の隠れ家と明智事務所が、舞台の左右に半分ずつのセット。
黒蜥蜴は、 全体は深い臙脂色、前身ごろにスパンコールの飾りのついた黒い生地をはめこんだ、
ずっしりと質感のあるドレス姿。
裳裾をひき、たっぷりとギャザーのはいった、まるで皇妃のように優雅な衣装に、黒い扇と赤い鞭が効果的。
そして、別々の場所にいる黒蜥蜴と明智が両側から独白のかけあい。
大きな派手なアクションがあるわけではない。科白のぶつかりあいだけ、
発すると同時に消えていく声だけで、フェンシングのように優雅に鋭くうちあう。言葉の格闘技。

第三幕/東京タワーの展望台
誘拐した令嬢と引き換えに 213カラット!のダイヤを受け取る黒蜥蜴。
シルバー地、裾に黒い柄が斜めにはいった着物。 金色のバッグ。

しかし、黒蜥蜴は、生き人形として恐怖美術館のコレクションに加えるため、令嬢を連れて船で逃亡を図る。
長いすに忍び込んでいる明智にむかって、黒蜥蜴が心情を吐露するシーン。
黒蜥蜴は、雨粒のような形の光る石を縦列に縫い付けた黒いドレス。
動くたびに後ろにひいた裾の石が床にあたる音。
裾が重いから、さっとターンできない。ゆったりと裾をまわしながら、優雅に動く。

明智に恋をした黒蜥蜴は、明智の心を自分のものにしたい。
しかし、明智が自分の心に入ってきたら、自分が自分でなくなる。
葛藤しつつ、手下に命令して長いすを海に投げ捨てさせる。・・・が、実は明智は・・・

廃工場から恐怖美術館へ。
グレイからグリーンのグラデーションがかった玉虫色のガウン風ドレス。
全体がヌメヌメと妖しい光を帯びて、 まるで沼の女王。または闇の女王、といった風情。

翌朝。
これまでずっと黒を基調にした衣装だったのが、一転して、胸元と裾にふわふわ羽根飾りがついた白いドレス。
これは花嫁衣裳か、死に装束か。そして、ラストは・・・

とまあ、全部で何回着替えをしたことでしょう。コスプレ黒蜥蜴。
退廃的で豪華で妖しくて毒があって美しい世界にどっぷり浸った3時間半。
豪華なのは衣装ばかりではない。凝った舞台装置も見事だった。
最後の恐怖美術館など、一歩あやまったらお化け屋敷になりかねないところだが、
まるで、アールヌーボーのラリックやガレのガラス器のような、妖しく儚くも豪華なセットだった。

美輪にぶつかる高島政宏がいい。立ち姿がよく、科白もよく通る。色気と品がある。
カーテンコールはスタンディングオベーション。2度、3度と幕があがる。
美輪明宏の優雅な投げキッスと抱擁の仕草に、おもわず場内からどよめきと歓声。
これを他のだれがやっても嘘っぽく浮いてしまうだろう。
虚構の世界。嘘の世界をこれほど美しく魅せてくれるのは、虚構の女優・美輪明宏しかいないのではないだろうか。
あえて挙げるなら、大地真央か。しかし、清潔感と健康さが邪魔をする。坂東玉三郎でも、ちと違う気がするし。。。

これから観劇なさる方で匂いに敏感な方は、ハンカチかマスクをお忘れなく。
第二幕があくと同時に客席にまで香水の匂いがただよってくる。
さらに道化が香水をふりまく。むせかえるような匂いが館内に・・・









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