『オイル』(2003・7/31  DVD鑑賞)

作・演出・大国教授   野田秀樹
冨士           松たか子
やまと          藤原竜也
マサカ軍曹・神マサカ  小林聡美

去年、野田秀樹の「パンドラの鐘」のビデオを観た。
古代遺跡を発掘する現代と、その古代の王国が行ったり来たり。
二つの場面のつながりがわからないまま笑い転げて見ていて、最後の十分で、
墓堀人夫ミズヲと 王女の悲痛な叫びと告発の声に号泣した。
鐘、ミズヲの名前の由来、ナガサキなどなどの意味が、最後の最後で、しゅーーーーっと集約された見事さに
感動した。「オイル」は、それに続く作品。
インタビューによると、野田は、原爆を描く、ということにためらいがあったが、「パンドラの鐘」の成功で
今回は楽になったという。
たしかに、今回は最初から全体像がはっきり見える。
原爆告発・アメリカ批判・アメリカに追従する日本人批判・・・アブナイ科白がポンポン飛び出す。
しかしまあ、よくぞ、あれとこれとあれとこれをくっつけたものよ!
「オイル」一つでもいろいろな意味を重ねて、まさに言葉の魔術師。
神様の声が聞こえるという富士を演じた松たか子は、まさしく神がかり的演技。
発声がクリアで身体表現も表情も豊か、いい役者だ。
そして、手! 腱鞘炎にならなかっただろうか・・・
冨士がやまとをかき抱いて、繰り返し語りかける「これは、あなたのことなのよ。あなたのことなのよ」が
拙著「折り鶴は世界にはばたいた」の中のエレノア・コアの言葉、「It's your problem」とダブる。
「そんなに簡単に恨みは忘れられるの? 恨みに時効はないの? たった一ヶ月でコーラが飲めるの?」が
突き刺さる。
「二つ落としたんでしょう。さあ、三つ目も落としましょうよ。他人の国に原爆落としたのは、
アメリカだけなんですから・・」(山口沙耶加。意外にいい)の科白をアメリカ人に聞かせたい。

ただ、ラストの時間のトリックには少し無理があったような・・・
象徴と抽象の世界「パンドラ・・」と比べると、↑の科白でも分るように直接的でナマ、
という印象はあるが、それだけに訴えるものは強いかもしれない。



蛙女 題名:まったまたお久しぶりです。「オイル」の感想です。

バーバままさま・水玉さま
さて「オイル」のDVDやっと観ました。ありがとうございました。2度観ると、生舞台を
観に行った時には理解できなかった所もなんとなく分かってきて、さらに面白かったです。
(ちょっとカメラのアングルには不満がありましたが(涙))
もう、皆様がたいていご覧になっているという前提で内容等も書いてもいいですよね?
古代と現代とが交錯するのは「パンドラの鐘」もでしたけれど、パンドラの時ほど
そういう設定にする理由をガツンと納得できていなかったのですが、もう一度観てやっと
ガツンと来ました。鈍感ですよね。
もちろん、アメリカと古代の神々をダブらせているくらいは分かったのですが「オイル=老いる」という
言葉遊びがなぜ必要なのか、DVDを見直してやっと…(笑)
生の舞台を観ている時は圧倒されていて、脳味噌が充分に働いていないのですかね?
DVDだとちょっとは冷静にセリフも聞けているみたいです。
小林聡美さん扮するマッサーカー軍曹が悪夢にうなされた後「石油って、化石が燃えてるのよね」
みたいなセリフを言う場面にやっと納得しました。古代の人々に、松たか子さんの富士さんが
「老いて腐って土の下に潜って復讐をするのよ」か何か言っている場面へ繋がっているんですね。
老いる事を知らなかった古代の人々が、老いる事を知って死んで土に潜って、やがてその死体は
オイルになるんですね。それを分からないでよく面白いと思えてたなあと。
それ以上にすごく面白い要素の詰まった芝居だったという事なんでしょうね。
また、野田秀樹さんにやられました。

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Res:バーバまま

「オイル」
舞台だと科白を聞き流してしまったり、こっちの動きに目をとられているあいだに、
あっちでなにかおこっているのを見逃したり。。まあ、DVDでもカメラのフレームという
枠があるわけですが、巻き戻したり早送りして何度でも確認できるという利点は大きいですね。
「オイル」というタイトルから、当然石油、それも、イラクや湾岸戦争での石油の利権。
さかのぼれば我が国がABCD包囲網で囲まれ石油不足から戦争に追い込まれた、
というのも連想される。でも、「老いる」とは、やられましたね。
>悪夢にうなされた後「石油って、化石が燃えてるのよね」みたいなセリフを言う場面
マッカーサーからマッサーカーという語呂合わせも、真逆(マサカ)で真っ青だしね。
山口沙耶加の「自由と平和。つまり、石油と戦争でしょ」みたいな科白も、そうそう!て、
思わずうなずいちゃいます。
一つ一つの科白が、ナマといえばナマなんだけど、それだけにズキンズキンと響きましたね。

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Res:水玉

バーバまま さま。
さて、「オイル」のお話を、ついに出来る日がやって来ました!
蛙女ちゃんいわく、DVDだといまのセリフもう一回、というのが出来るから、ありがたいです。
内容がパンドラより複雑(答えのない問答だったりするから、よけいに複雑)なぶん、何回も観て考える
種類の舞台だと思いました。
まあ、私はすばり「パンドラの鐘」のほうが完成度は高いと思うのですが、「オイル」は演劇の
パワーみたいなものがはじけていて、好きです。
とにかく今思うことを(答えは出ていなくても)なげかける、叫ぶ。しかも、役者が目の前で生で主張する、
過激なセリフで語りかける、そういうのがおもしろかった。
演劇というのは、こうでなくちゃ、みたいな興奮がありました。
ただ攻撃的なぶん、しこりみたいなものも多く残りました。答えは出していないにしても、
原爆落としたアメリカを、アラスカを買ったアメリカを、またはアメリカと戦っていたのにすぐに
アメリカを受け入れた日本を、攻撃的な視点で見る姿勢は、一瞬でもすっきりしない気もしました、やっぱり。
「パンドラ」の時は、原爆は絶対いけない、悲しい、つらい、というはっきりした一つの答えが
あってのことだったので、観た後、すっきり泣けたんだと思うんですよねえ。
今回は、私は素直にはどこのシーンでも泣けなかったです。
あと、「パンドラ」が泣けて、「オイル」が泣けない原因は、「パンドラ」には
わかりやすい「愛」があって、「オイル」にははっきり見える「愛」が描かれて
いなかったからかもしれません。う〜ん、「パンドラ」ではヒメジョ(でしたっけ?)とミズヲの愛に
ストーリーが集まっていたけれど、「オイル」での富士と大和の関係はそれほど濃いものではなかったですよね。
まあ、私の思うに〜、の意見です。どう思われますか?
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Res:バーバまま 題名:ようやく

「オイル」の感想を語り合えるときがきました。
よろしかったら、ekoさん。やすさんもどうぞ♪

>「パンドラの鐘」のほうが完成度は高いと思うのですが、「オイル」は演劇のパワーみたいなものが
はじけていて、好きです。

はげしくうなずいてます。「パンドラ・・」はヒメジョ(そうです、この名前)とミズヲ (名前で号泣)
の究極の、でも普遍的な「愛」にすべてが集約されて、時代や地域や民族や 政治や・・・
そういうキョウザツブツなしで通じる感動と人類としての告発。
「オイル」は、これぞ舞台でなければとうてい表現できない。なまっちろいテレビでは
すべてに放送コードにひっかかって放映どころか企画の段階でボツ、でしょう。
それだけに、登場人物たちの口を借りて日頃のうっぷんを晴らす、という意味では爽快でしたが
完成度という点では、いささか劣るかな、と思いました。
ラストの大和が産業奨励館から電話、というのも、あそこへ立たせるために、それまでの
流れがあるというには、かなり無理があると感じました。
「オイル」でわたしが一番つよく印象に残ったのは、松たか子って、いい役者だなあ。
と、これまでの認識を新たにしたこと(舞台の松たか子ははじめてみたので)・・・かな。
「あめ。つち」「そら。くも」「やま。たに」・・・のあたりは、鳥肌がたちました。

演出の力もすごいし。

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Res:水玉

同じようなことを、思われましたか。
私だけじゃなかったんだ。
「オイル」においては、ナマコをもっと上手く描くべきだとおもったんですが、どうですか? (えらそうな私、あはは)
松たか子、私も舞台での彼女を初めて見ましたが、いい役者さんだなあと思いました。声もとおるし、バネもある。
いやみのない清潔感が素敵でした。
「あめ。つち」「そら。くも」「やま。たに」・・・のあたり、うんうん、鳥肌がたちましたね。
いがいと山口沙弥加も、良かったです。
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Res:バーバまま 題名:オイルは続くよ

ナマコと冨士の親子てのも、笑いはとれたけど、そっちに目が行きすぎたかも。
   *これはわたしの勘違い。ナマコは時間の観念を象徴する男の役名
冨士と大和が姉弟というのも弱かったかも。
やっぱり、男女の愛でしょ。泣けるのは。でなければ、親子。
・・・なあんてね、言いたい放題いえる幸せ!

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Res:eko 題名:はーい。

久し振りにおじゃましたら、呼んで下さってて、さっそくでてきましたー。
みなさまのお話に、うんうん、とうなずきつつ読みましたー。
「パンドラの鐘」は見ていないんですけど、 水玉さま♪ ヤマトと富士の関係。。。
確かに男女の愛とか、姉と弟の愛とか、すごく強い関係ではなかったかも。
そういう愛より、富士が始めと終わりに呼びかける神への思い、みたいなものの方が、私には大きく
思えたけどどうでしょうか?
実は、あそこがいちばん切なくて泣けたです。
 日本人が老いないーー時間の感覚がない、つまり、されたことに対する怒りをもてない(?)
これってものすごく痛烈な批判なのかなーと思ったり、古事記を一応さらっと読んでいったんだけど、
神代の時代のあの国ゆずりの話にその姿を重ねるなんてががーん!、日本人のDNAのせい???とか、
出雲にマホメットがいたって、随分前のお芝居でも言ってたけど、野田さんにとってマホメットてなんなの?
と、まあ、見ながらあれこれ考えるのにも忙しいお芝居でした。
 今までになかったようなはっきりとした台詞、これって、のだひできは怒っているのかなあと。。。、
今までもすごい「念」みたいなのとか「エネルギー」とかは感じるけど、
それでも言葉遊びっぽい部分や時空を交錯する面白さが多かったように思えるのに比べて、
これは、怒りをはっきりぶつけてるのかなあと見た後すぐは思いました。
ですが、役者のタイプがこういう形になったのかもしれないなという気も、今、ちょっとしてきました。
ワークショップを経て、テーマも形も創っていくようなことがどこかに書いてあったと思うけれど、
役者の存在というか、先に台本があるんじゃなくて、全員から、出てきたものってあるのかもしれないなあ
という気がします。

  バーバまま様>産業奨励館から電話…無理がある。。。>
といわれると、そういえば、あれ?時間のながれ、どういう風になってたっけ?
みていた時は、ぐいぐい引っ張られていたので、
「産業奨励館にいる」という言葉が耳に入ってきた時に、うわああー!そうなのかー!そういうことになるのかー!
と、もうその時点で胸が詰まって涙がぶあっと(けっこう感情移入してました。。。)
(そういう結末であろうと予想していた人もたくさんいるんでしょうけど、わたしゃ、素直にはまっていました。)
そしてそして、バーバまま様、同感!松たかこ、よかったです。はじめて舞台の松たかこを見ました。
テレビのドラマで見る時はそんなに思わなかったけれど、舞台、よかったです。
山口沙耶加も、過激な台詞を叫ぶのに適役だったと思います。
役者のなかで、この人いいなあと思ったのは、北村有起哉。

みなさんの話を伺って、「パンドラ」観なくちゃ。と思いました。

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蛙女

ずばり、完成度は「パンドラの鐘」の方が上という意見にはわたしも賛成かも、です。
娯楽性で言っても、パンドラの方が遊んでましたし。やはり、それは出演の役者さんにもよっているとは思われますが。
「オイル」は、野田氏にとってずいぶん冒険作だったのかもしれません。
もちろん、毎回毎回が冒険なんでしょうが、 いつもよりも、きっと。
生の舞台を観ている時感じたのですが、自分がセリフを言わなくていい時に、野田氏は
心なしか舞台上手で観客の様子をうかがっているような気がしました。
野田地図の生舞台を観るのは初めてだったので、もしかすると、野田氏は舞台上にいても、 常に演出家の意識を
捨てない人なのは常識なのかもしれませんが、初めて生で観たわたしは「おおっ!見てる見てる」と思いました(笑)
とはいえ、今「オイル」を上演できたのは野田氏だったからだとも思います。








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