日本文学 − た行




田辺聖子 『ジョゼと虎と魚たち』   角川文庫  1987

表題作など9編。どれも、女性の側から描いた短編。
男と、このままの関係から一歩出ようか留まろうか、など女の視点がリアル。
どの女も、少しばかり底意地が悪かったり、自分というものをわかっている。
映画化されて脚光をあびた作品だが、初版はかなり古い。
それだけに、表現の確かさはすぐれているが、風俗を切り取る短編としては若干の古さを感じた。

谷崎潤一郎 『猫と庄造と二人のおんな』  新潮文庫 1951

グズでお人好しの庄造。しっかりもの品子を追い出し、後釜にすわった福子。品子は福子にある手紙を。
一匹の猫をめぐる男と二人の女のカリカチュア。人間って哀しくて、可笑しい生き物だなあ。。。

筒井康隆 

  『旅のラゴス』(新潮文庫 2001)

  『家族八景』(新潮文庫 1972)

  『七瀬ふたたび』(新潮文庫 1978)

  『エディプスの恋人』(新潮文庫 1981)


津本陽  『富士の月魄(つきしろ)』  文春文庫   1990

白根周三は、明治維新の際、彰義隊として上野で戦っているあいだに両親を殺され、妹は行方不明。
駿府に無禄移住した周三は、妹の行方を追う一方、同士とともに新政府転覆を図る。
五稜郭で辛くも生き残ったあとは、政府要人暗殺のため大坂へ、そして新潟の一揆に加担し。。。
膨大な資料の裏づけもあり、旧幕臣たちの悲惨な暮らしぶり、鬱屈した思い、薩長の田舎侍たちの居丈高な振る舞い・・
などなどは、実によく描けている。斬りあいのシーンなど、ほんとに肉を切られ、血がほとばしる有様が浮かぶ。
でもなあ。。。女がさっぱり。。。まるで木偶の坊みたいに「個」がない。

後半からトーンが変わって、筋立てが粗っぽくなっている。風呂敷を広げすぎたか・・・
ばっさばっさと人を斬るのはともかくとして、行動原理に「志」が見えない。
冒険小説として読めばいいかもしれないが。。。




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