筒井康隆



短編はちらちら読んでいたが、ちょっと縁遠かった。なにしろ、多作で、どこから入ったらいいか・・・
十年ほど前「パプリカ」を読んでぶっとんだ。
そのあと、あいだをあけて「朝のガスパール」を読んで、また面白かった。パプリカでお馴染みの顔ぶれも出てくるし。
で、遅まきながら、ちょっと気になる作家になった。

『旅のラゴス』    新潮文庫  1994

ラゴスは旅をしている。何年もかかってひたすら旅をしている。
集団転移・壁抜け、などなど、いかにも筒井らしいSFネタもちりばめてあるが、
全体通してラゴスは人類の文化文明の歴史の旅をしている。
政治。経済。医学。科学。。。ラゴスがたどる道筋がそのまま、近代文明の黎明の伝播でもある。
そして役目を果たしたラゴスは・・・
うーん、なんと説明したらいいんだろう。ストーリーを説明すると真面目なようだけど、
けして深刻ではない。
もちろんパロディではないけど、奇妙な味付けがほどこしてある。
言葉がとても深いのだけど、押し付けがましかったり、思わせぶりではない。
そう、澄んでいるのだ、作品世界が。
ちょっと筒井感を一新した。おどろきの作品。
まるきりちがうけど「百年の孤独」の場面を連想したような・・・

『家族八景』    新潮文庫  1972

わたしの中で筒井は、パロディ・サービス精神満点・ぶっとび系。というイメージだったが、
読み始めて、ううう・・・(どう表現したらいのだろう・・この気分)
七瀬は人の意識が読める。相手の先回りをするから気が利くようにも見えるが、かねあいが難しい。
相手の敵意や無意識下の欲望なども見えてしまう。
だから一箇所に定住しないよう住み込みのお手伝いさんをしている。
その雇い人の家族の八景。夫婦。親子。。。。家族のあり方、どれも痛い。ヒリヒリ痛い。
そういえばここんとこ、「鳩笛草」「光の帝国」などエスパーものを続けて読んだなあ。
超能力って一見羨ましいように思うけど、でも本人は辛いのね。
全部で三部作らしいが一気にいくか、あいだを空けるか。。。


あるぷさんの書き込み
お。読書日記にさっそく『旅のラゴス』と『家族八景』が登場してますね。
『旅の〜』から『百年の孤独』を連想するとのご感想、深く同感です。
容赦ない時の流れの中で、何かを伝えようとしながら生まれては死んでいく人間たち…
あんなものも書けてしまう作者の頭の中はどうなってるんでしょうね。
七瀬シリーズは、巻ごとに世界が全く変わるのがすごいところです。お楽しみに。


『七瀬ふたたび』 新潮文庫  1978

いや、驚きましたよ。あるぷさま。

お手伝いさんとして家族の醜悪さをみてきたテレパス七瀬。
あれから5年、美しい年ごろの女性となった七瀬の周りに次々ちがう能力を もったエスパーが現れる。
未来予知。透視。念動。タイムトラベラー。
そんなにぞろぞろと、なぜ? という疑問は、読み進むうちにあきらかになる。
家族から国家へ、作品世界はワープ!
これはすぐさま『エディプスの恋人』へ直行せねば!

『エディプスの恋人』   新潮文庫  1981

『家族八景』で、まだうら若い幼さの残る七瀬は、人間の醜さ、家族の欺瞞をいやというほど見せ付けられた。
で、『七瀬ふたたび』では、すっかり美しく変貌した七瀬がさっそうと現れた。
いよっ。待ってました! しかし、やはり超能力者が安住できる場はなかった。
では、特務機関に利用されるか、地球防衛軍にでもトラバーユするか・・・
ところがどっこい、筒井は只者ではない。 <神>をだしたのだ。
最初読み始めたとき「彼・香川智弘」が<神>かと思った。
しかし、「彼」は<神>の子だったのだ。
読了後、あまりの仕掛けに茫然自失。いったい、なんなの?!
たしかに神という幻想に対する問いかけ、あるいはパロディ、あるいは既成概念の転覆。
しかし、どうも納得できない。
「彼」との接近・「彼」との恋・・・いや、よみがえった七瀬がこの町に来た事からして
<神>の意思だとすれば、七瀬が混乱したとおり、七瀬の存在はなんなのか。
そもそも人間の存在は なんなのか・・・
それよりなにより、「彼」は一体何者なのか。 たんなる教育ママのロボットではないか。
七瀬をそんな「彼」の人身御供にしてしまっていいのか。>筒井
超能力よりもただのお坊ちゃまと結婚した方がオンナの幸せというのか。
それとも、恋愛こそおおいなる幻想、むははは。と笑っているのか。
たしかにあれほどの幻想はないけどね・・・
宙にほおりだされた気分。見事に筒井の術中にはまってしまったな。


混乱したわたしはセージュさんのサイトに書き込みをしました。
そこでの、みなさんの解説などをご紹介します。



混乱の極致 投稿者:バーバまま 投稿日:2002/12/17(Tue) 20:22

「エディプスの恋人」読了して完全 に混乱してます。
「七瀬ふたたび」はめちゃめちゃ面白かったのです。もう、完璧に 面白かった。
がらっと舞台装置が変わって、違う作品世界になって いて。
で、「エディプス」で茫然自失。 世界が大きすぎて把握できない。
なに、これ?????
いや、あのシーンはどうでもいいの。 「彼女」の鬼子母神みたいなキャラならわかるような・・・
しかし、ここでいう神は絶対神じゃないわけ?
八百万の神じゃないよねえ。 でもって、どうして交代したの?
というかじゃあ、前の神様はどこへ行ったの? 政権交代? だれ が政権交代を命じたの?
でもって、なぜ珠子さんが選ばれたわけ? まあ、選ばれたのはいいとしよう。
なぜ、神となっても「珠子」の 記憶が残るの?
教育ママをパロってる? グレートマザーか?
というかこの仕掛けはいったいなんなのーーーー?
筒井の頭の中はどーなってるのーーー

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会心の一撃(^^) あるぷ - 2002/12/17(Tue) 23:47

ふははははは(←筒井流怪笑)
効き目のほどはいかがでしたか。
煽動した甲斐があったようですな。
続きは夢でどうぞ、というわけでひとまず退散。

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Re: 混乱の極致 バーバまま - 2002/12/18(Wed) 11:02

まだ頭の中が未整理で、読書記録にアップできないでいます。
最初読み始めたとき「彼」が<神>かと思った。 でも、「彼」は<神>の子なのよね。
どうも納得できない。
「彼」との接近・「彼」との恋・・・いや、よみがえった七瀬がこ の町に来た事からして
<神>の意思だとすれば、七瀬の存在はなん なのか。
それよりなにより、「彼」は一体何者なの。混乱してます。

「恋」してる(させられている)七瀬には素敵な若者かもしれない けど、たんなる教育ママの
ロボット、いや、それ以下、将軍さまの お子様のような鼻持ちならないオトコじゃない。
正常な感情や情緒が発達してない、偏った人格。
七瀬をそんな「彼」の人身御供にしてしまっていいのか。>筒井
超能力よりもただのお坊ちゃまと結婚した方がオンナの幸せという のか。
まあ、愛だの恋だのなんて、客観的に見てあーだこーだ言えるもの じゃない。
まさしく<神>のみわざなのかもしれないけど・・・
作品は面白かったし、仕掛けにはあっと驚いたけど、なーんか納得 できないのは、
わたしの読みが偏っている?
だれか教えて。

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Re: 混乱の極致 風太 - 2002/12/18(Wed) 13:04

『エディプスの恋人』
バーバままさまと同じく私も読んだときは「?!」でした。
せっかく甦ったのにそれはあてがわれるためだったのか、と。
この神さまって神のくせに母親のエゴをひきずってる。
バーバままさまのように深く考えたわけではなかったけど
神ですらもこれだから、この世は不条理なんだ
ということなのかなあ、と苦しい解釈をしてましたっけ。

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Re: 混乱の極致 セージュ - 2002/12/18(Wed) 23:14 No.1286

「七瀬三部作」
シリーズを通して見ると、「家族」という単位から、 「国家」、「神」とスケールの大きな方へ
移りながら それらが共同幻想に過ぎないと喝破して行くのは流れとして
分かり易かったのですが、 『エディプスの恋人』の「恋愛」も言われてみれば人身御供で、
そう言う意味ではついでに「恋愛」もまた幻想に過ぎない…と
いわゆる対幻想まで喝破しているとも読めますね。

でも、この辺の話は吉本隆明について語らざるを得なくなって、
僕自身が大変になるのでやめておきます(苦笑)。

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一言だけフォロー あるぷ - 2002/12/18(Wed) 23:20

悩めるバーバまま殿
そう、SFは危険物なのです。ははは。
ちょっと真顔に戻っておこがましくも助言させていただきますが、次な る筒井作品としては
『美藝公』(びげいこう)をお勧めいたします。
一見SF色の薄い、短めの長編。
舞台は、第二次大戦後、映画立国を遂 げたもう一つの日本。
あらゆることが映画の美を中心にまわっている社 会の、最も尊敬される階層である
俳優やスタッフたちの群像を描いたユ ートピア小説です。
え?『エディプスの恋人』と関係ない?それが、大ありなのですよ。
『美藝公』のテーマは、『エディプス』最終ページに直結していると言 っても
言い過ぎでないくらいで、しかも、よりわかりやすく熟成した形 で展開されています。
しかし↑の感想からすると筒井美学にはちょっと 反撥をお感じになるかも、ですが。
私は、あの息子の人格、けっこう好きなんです。

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 あるぷ - 2002/12/18(Wed) 23:27 No.1288

そういえば、高校生の頃、『エディプス』を読み終えた時の浮遊感、不 確実感(?)は、
たまたま同時期に読んだ岸田秀『ものぐさ精神分析』 の読後感に近いものがあったような。
筒井さんは、幻想だと悟った上で どう生きていくか、について独自の哲学、
というか美学をお持ちです。
そのあたり、さすが「本業」が俳優だけのことはあります。
吉本御大、全く読んでません。だって難しそうなんだもん(逃)

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Re: 混乱の極致 バーバまま - 2002/12/19(Thu) 09:16

うう。ありがとありがと。
みんなでバーバの混乱を解説してくれて・・・

で『エディプスの恋人』
うーん。家族から国家へ、ときて、これが普通だったら特務機関か 地球防衛軍しかないじゃん。
でも、神って???
筒井だから、なにか仕掛けがあるんだろうとは思ったし、 神をさえパロってしまう筒井の
恐れを知らぬふるまいには 呆れながら一緒になって笑ってしまうのだけど・・・
たしかに「恋愛」も幻想なんだけど・・・・
「彼」がなあ・・・・納得いかんなあ。

たぶんねえ、わたしは意志的な人が好きなのよ(作品世界の中で、 ですよ)
だから、運命に翻弄されても、たとえすべての事柄が神のしろしめ すことであっても、
自分の自覚と意思でもって行動して欲しいの ね。主人公には。

テレパスたる七瀬が生きる道は、それこそ地球防衛軍でなければ、 <神>の子に
あてがわれるしかないとしても、釈然としないな あ・・・ぶつぶつ。
だって、これだったらなにも自己責任とらなくていいもん。これか らの人生で。
ああ、また過剰に感情移入してる。
『美藝公』・・・これ以上混乱をきたすと、なにをやらかすかわか らないので、
ちょっとクールダウンしてからね。

>みなさま。
混乱ぶりにおつきあいくださって、ありがとう。

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トートツですが…。 ぐえん - 2002/12/19(Thu) 10:51

いきなり横レス。

>たぶんねえ、わたしは意志的な人が好きなのよ
なら『エマノン』がいいんじゃないですか。
十二分に意思的だし。七瀬つながりだし。

いやはや、ほんとに混乱してますね。



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